猫のお産と新生児の病気②

お産

猫の平均妊娠期間は、63日と考えられていますが、58日から71日の間でかなり変動します。
妊娠42~43日を過ぎると、レントゲン撮影により胎児が移るようになります。
57日目に、病院でレントゲン検査・血液検査・超音波検査等をしてもらい、必要があれば、入院分娩の手はずなどを、獣医師と前もって相談しておきます。
分娩が近づくと、食欲もなくなり、体温も下がります。分娩は、一般に夜半過ぎから夜明けにかけてが多いようです。
陣痛が始まったら、異常のあるなしにかかわらず、すぐに獣医師に連絡を取っておくことです。
最初の仔猫が生まれてから最後の仔猫が生まれるまでの時間は、一定していません。
生まれてきた胎児は、うすい袋をかぶって出てきますが、母猫はすぐにそれを食い破って食べてしまい、臍の緒を噛みきります。

もし、仮死状態で生まれた胎児がいたら、すぐに鼻の穴をふさいでいる粘液をていねいにふきとり、口の中をぬぐってやった後、体をふいて全身を強くマッサージしてやることです。
胎児の姿勢に異常があったり、胎児が大きすぎる、あるいは陣痛が弱すぎたりすると、難産が起こります。
このような場合には、直ちに獣医師に診てもらい、その指示に従うことが母猫、仔猫のより多くの生命を救うことになります。

産後

分娩が終わっても母猫は、仔猫が気になって、なかなか排便や排尿さえ、外に出ようとしませんが、時間をみはからって、上手に誘い出し、産室の汚れた床を取り替えたり、不具な仔猫や、特別に手当てが必要な弱々しい仔猫が、いないかどうか調べます。

また、母猫と仔猫の様子をよく観察し、乳が飲めない仔猫がいたら、母猫の乳首につけて吸わせてやるとか、母猫が意識的に遠ざけるような仔猫がいたら、離して獣医師に相談してください。
授乳中の母猫は、平素の2倍以上栄養を必要としますから、日ごろ食べなれてる食事のほかに、猫用の粉ミルクを溶かしたものや、水も産室の中や、近くに運んで、安心して食べられるようにしてやるのもよい方法です。
このように、お産の後の母猫と仔猫の世話には、細心の注意が必要です。

新生子の生理と病気

【新生子の成長】

新生子とは、出生から3週齢までの仔猫のことです。この期間の死亡率は、約20%に達していますが、この率は、繁殖系、飼育環境、衛生状態などで、良くも悪くもなります。
生後24時間は、90%は眠っています。残りの10%は母乳を飲む時間です。母猫のミルクを飲むことによって母体で暖められ、新生子は体温を保つことができるのです。
また、母親に充分な伝染病の抗体がある場合は、母乳を飲むことによって、免疫抗体を受け継ぎます。

3日目までは、脚を曲げる筋肉が優勢なために、新生子はいつも丸まっています。
4日目までは、皮膚を収縮させることができません。
6日目までは、まだ体を震わせることはできません。
7日目までは、体温調節ができません。
10日目ぐらいから、眼が開きだします。
16日目ぐらいから、歩き出すことができます。

体重は毎日調べ、生後8~10日で、生まれたときの2倍になるのが正常です。
体温調節機構は未発達なので、4週齢までは、成猫の体温より1~5.5℃低いことも珍しくありません。

【新生子の育て方 】

不幸にして母猫が育子が行なえないなど、母猫の代わりに飼主が育てる場合があります。
仔猫のいる部屋の温度を27~32℃に保ち、仔猫のベッドにも、ペットヒーターなどで保温してやることもよいでしょう。
仔猫が泣く時は、病気か、寒がっている場合か、おなかがすいてミルクが飲みたいときです。
ミルクは、猫用のミルクを与えます。動物用の哺乳瓶を用意して、ミルクは毎日新しく作り、38℃ぐらいに暖めて飲ませます。
初めはうまく飲めないかもしれませんが、あせらず時間をかけて飲ませてください。だんだん上手に、飲むようになるはずです。
ミルクの量や回数については猫用のミルクの説明書に詳しく書いてありますが、猫の育ち具合にもよりますので、それより先のことは獣医師に相談してください。
新生子は自分だけでは便や尿の排泄ができません。母猫が赤ちゃんの体をなめてやることで、うまく排泄することができるのです。
したがって人が育てる場合には、母猫の代わりに食後に脱脂綿やティッシュぺーパーなどを利用して、肛門および陰部をやさしく刺激してやればよいでしょう。
こうすることによって猫は容易に便や尿をすることができます。
毎日体重を計り、健康状態をチェックしてみましょう。よく飲み、よく眠り、よい便をしながら、毎日確実に体重が増えているようであれば発育は順調であるということになります。
生後1ヶ月ぐらいになれば、初めての虫下しや、ワクチン接種が必要になりますから、必ず獣医師に相談するようにしてください。

【新生子の病気】

母猫が健康で環境がよければ、3ヶ月齢までは一般の飼主の方に関係のある病気はあまりありません。
起こりやすいのは低血糖症、低体温症、水分の不足による脱水です。
これらの原因は、母親にある場合と、新生子そのものにある場合があります。

【母親の場合】

栄養不足、ミルクの分泌の不足、病気、仔猫の面倒をみないなどがあります。

【新生子の場合】

未熟子、先天性奇形、兄弟が多くて充分にミルクを飲んだり、世話をしてもらえない場合があります。
だから新生子の病気を注意する場合は、母猫の健康状態も充分に注意しなければなりません。

【簡単な処置】

低血糖症:ハチミツまたは砂糖をとかした温水を与える。
低体温症:体温を34.5℃以上にして母猫にもどす。この場合、人間の胸で暖めてやってもよい。
脱水:水分やミルクを与える。
寄生虫病:
①交配する前に、母親の便の検査を行い、必要に応じた駆虫をしておく。
②生後3週齢になったら、1回目の駆虫、特に回虫の駆虫を行ないます。

【新生子の病気の見つけ方】

毎日、1頭1頭の状態を調べます。
①体重を調べる。病気になると、体重の増加はストップします。
②便の状態、色を調べる。病気が進むと、便の色、形、臭い、などが変わってきます。
③体温を調べる。母親は、仔猫の体温が下がると、他の猫と区別して、面倒をみなくなってしまいます。また、口の周りにミルクがつくのも、体温が下がっている証拠です。
④全体の動きを調べ、他の新生子と比べて、よく観察することです。
その他、異常があればただちに、獣医師に相談することが大切です。

猫のお産と新生児の病気①を読む
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