リスザルの栄養性疾患

サルは雑食性であるというオーナーの固定観念により、ヒトの食事の残飯を給餌することが主な原因となる。
また、ビタミンC欠乏症が好発するが、他にもビタミンB欠乏による皮膚疾患、ビタミンA欠乏による眼科疾患等もみられる。

リスザルのビタミンC欠乏症

霊長目は、D-グルコースからアスコルビン酸を生成するのに必要なL-グラノラクトン酸化酵素を欠く。
アスコルビン酸は、コラーゲン内のヒドロキシプロリンやヒドキシリジンの生成に不可欠である。
ビタミンC(アスコルビン酸)欠乏症は、一般的にヒマワリの種をはじめとする種子類、ヒトの残飯の多給で発生することが多い。
なお、サル専用フードにはアスコルビン酸が含まれているので、長期間の保存、またはふやかして給餌することはアスコルビン酸が不活化するので、注意が必要である。
症状は、肋軟骨の接合部の腫脹、長骨端骨板の変性、出血傾向等を呈し、全身的な症状として食欲不振、被毛粗剛、乾性脂漏、鼻汁、体重減少、貧血等がみられる。
重症例では歩行を嫌い、四肢を引きずり、全身の痛みを訴えるようになる。
なお、リスザルでは頭部皮下血種が特異的に発生する。時折悪臭のする便をするが、これは腸管上皮の変性が消化と吸収に影響を与えるためである。
診断は、症状や給餌歴を確認し、治療的診断を行う。X線検査で、肋軟骨接合部の腫脹や骨端の異常津尾が確認されることもある。 治療は、原則的にビタミンCの投与を行う。しかし、要求量は年齢や個体により大きく異なる。
軽症例では治療に対する反応はきわめて急速で、ビタミンCの投与、食餌の補正により改善する。

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