ハリネズミの皮膚疾患
ハリネズミの体表の背側には被毛が変化した針がみられ、脇腹から腹側にかけては柔らかく細い被毛が生えている。
針は総数で約5000本といわれ、約2~3cmの長さである。
針は自在に可動し、逆立てるとさまざまな角度に立って互いの重なりあって支え合い、砦のようになる。
一般的に、ハリネズミには皮膚糸状菌症とダニの寄生が好発する。
これ以外にも、細菌感染、アレルギー、代謝性脱毛、腫瘍等もみられる。
針が容易に抜けるので、皮膚疾患は早期に発見される。
皮膚糸状菌症
本菌はハリネズミに常在しているとも考えられており、ヒゼンダニとの併発症例が多く、ダニ寄生等の皮膚免疫能の低下が発症に関与していると思われる。
原因はTrichophyton crinacci(トリコフィトン・メンタグロフィテス)等の感染による。
本菌は通常は病原菌とは考えられておらず、ヒゼンダニとの関連が考えられる。
症状は、皮疹は体幹背側に発生し、フケ等がみられ、針が脱落する。
慢性の症例では皮膚の肥厚、角化がみられる。糸状菌の単独感染ではカユミはあまりない。
診断は、落屑から培養検査を行う。治療は、グリセオフルビン等の抗真菌剤の投与を行う。
可能なら抗真菌剤の薬用シャンプー等で薬浴を行うとよいダニの寄生がみられる症例には、ダニに対する処置も必要となる。
外部寄生虫症はハリネズミには外部寄生虫が好発する。
一般的に皮疹や針の脱落等がみられ、鑑別は容易である。
マダニ症
野生個体に好発し、飼育下での発生はまれである。
マダニは飽血(吸血して体長が数十倍の大きさになること)すると、脱皮もしくは産卵のため体表から離れる。
症状は、体幹脇腹や耳介の後方が好発部位である。重症例では、貧血、発熱、皮膚炎等がみられる。
診断は、視診で皮膚上のダニの検出を行う。
特に飽血したダニは明瞭である。治療は、刺し口が残らないようにダニを物理的に除去する。
または殺ダニ剤の外用を行う。
ヒゼンダニ症
皮膚糸状菌症と併発する症例が多く、相互に症状を助長させている。
ヒゼンダニは皮膚に穿孔をつくって生活している。
症状は、軽症例では無症状のこともあるが、皮疹として、鱗屑、落屑、痂皮、ソウ痒等がみられる。
重症例では大量の落屑がみられ、針が脱落する。
この落屑によってヒトにアレルギー反応が現れることもある。
診断は、皮膚の掻爬検査で成体や卵を検出する。
治療は、イベルメクチンの7~10日間隔の連続投与を行う。または殺ダニ剤の外用も有効である。