毛包虫症(アカラス)

Q.私の飼っている子イヌは、体のあちこちの毛が丸く抜けています。特にかゆがっている様子でもないのですが、どうしたというのでしょう。

 毛包虫症とよばれている遺伝病がありますが、ちょうどあなたの言っている症状と一致します。そしてこの病気は、子イヌに多く見られます。
 毛包虫症は、顕微鏡でしか見えない小さなダニによって発病します。このダニは8本の足をもった、葉巻のような形をしています。健康な人間や動物にもわずかな数の毛包虫が毛根に常在しています。しかし、遺伝的な欠陥によって免疫状態に異常が見られると、このダニが急速に増えます。その結果、ダニがたくさん増えた場所では皮膚が炎症を起こし、丸く毛が抜けてしまうのです。
 毛包虫症自体は、皮膚にかゆみを生じることはありません。しかし、患部が炎症を起こしたり刺激されることによって、かゆみを生じる場合があります。

 毛包虫症は、顔や足からはじまる場合が多いようです。局所的に発生し、治療をしなくても消えてしまうこともあります。しかし、毛の抜けた部分が広がったり、あるいは二次的な炎症を起こしたりすると、いわゆる「全身性毛包虫症」になり、ただちに治療しなくてはなりません。
 まずはじめに、多数のダニが発生していることを確かめるため、皮膚掻爬(そうは)テストを行います。皮膚炎がひどい場合には、血液検査と、適合する抗生物質を断定するためのウミの培養試験が必要になるかもしれません。これらのテストは、甲状腺機能低下症や貧血症などの病気が関連していないかを知るためにも必要です。

 ダニを殺すためには、数ヶ月にわたって薬用シャンプーが必要になります。ダニが死ぬと、毛の抜けた部分が前よりも悪く見える時期が一時ありますが、やがて回復します。イヌによっては、免疫状態がとても弱く、完全に毛包虫症を治すことができないこともありますが、多くの場合は治療できます。毛包虫症は遺伝病なので、この病気になった動物は、繁殖に用いるべきではありません。

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