ウサギの疾病
(感染性疾患)
感染性疾患
パスツレラ以外は、ペットでの発生はまれである。
学校の飼育ウサギや繁殖場での発生は、非常に重要な問題となる。
トレポネーマ
ウサギ梅毒、生殖器スピロヘータとも呼ばれている。
原因はTreponema paraluiscuniculiである。これは交尾によって感染するが、仔ウサギは母親との接触で感染する。
寒い環境は本症を進行させる要因となる。
症状は皮膚、粘膜の潰瘍、かひ痂皮、滲出液で、主に肛門、包皮、陰門に多い。
まれに鼻や眼瞼にもみられる。
ウサギ自身の行動には変化がおきない。
診断は病変のサンプル暗視野検査によって病原菌の確認を行う。
治療はベンザチンペニシリンGあるいはプロカインペニシリンGの投与である。
野兎病(人畜共通伝染病)
原因菌はFrancisella tularensisである。
多くの動物種に発生するが、その中でもウサギは感受性が高い。
急性の敗血症を呈し、症状が現れる前に死亡することが多い。
じっと動かなくなり、食欲の低下もしくは廃絶がみられる。
自然界では比較的普通にみられるが、ペットとして室内で飼われているウサギにはほとんどみられない。
感染経路は感染動物に接触することにより、皮膚を通して伝染されることが多く、またダニ、サシバエ、蚊、ノミなどの吸血節足動物により伝播されることもある。
人畜共通伝染病である。
ウイルス性疾患
粘液腫症(人畜共通伝染病)
アメリカ西海岸の繁殖コロニーで時々みられる。
ヨーロッパやオーストラリア、南アメリカでは風土病である。
原因は、天然痘ウイルス群(ポックスウイルス)に含まれる粘液腫ウイルスのうち、比較的病原性が強い株によるものである。
ウイルスは節足動物(ノミやダニ)により伝播されるか、もしくは直接感染する。
症状の多くは眼からの分泌物で始まり、眼がボーッと重たそうになる。
そして、眼の周囲、唇、頚部の皮膚が腫脹し、耳、肛門、生殖器に広がることもある。
顔中が腫れ上がったようになり(Lion face)、破裂部分からは滲出液がみられる。
治療法は知られていない。媒介している蚊から守ることが予防となる。