ウサギの疾病
(口腔疾患)

疾病

口腔疾患

ウサギは重歯目といわれ、特有の歯の構造と形態を持っている。
従って肉食、雑食性動物と同様の歯のメンテナンスでは、人為的な疾病が発生するのは当然である。

不正咬合

ウサギの歯は常生歯(無根歯:通常の歯根形成を示さない)といって、犬猫と異なり、根尖で生涯歯を形成し伸び続ける。
通常は自ら餌で、歯を磨耗させたり、歯と歯を合わせてはハマグリのように歯を咬耕させて、歯冠の長さを調節している。
しかし、事故による歯の破折(ニッパ等での切歯切断、落下事故等)、遺伝的に不正な咬合(常染色体劣性による下顎過長症等)、歯が磨耗しない餌の給餌(パン、炊いた白米、ソフトタイプペレット、軟らかい野菜等)などの要因により、磨耗の回数が減り、切歯も臼歯も過長や湾曲、捻転、歯棘形成等がみられ、正確な咬合ができなくなる。
症状は食欲不振、りゅうえん流涎、体重減少、下痢などである。
歯冠が十分に削れないと歯冠が伸びるが、上下顎の歯で互いに抑制し合う。ところが歯の形成が続くために歯根が伸びてしまう。
過長した下顎の臼歯歯根は下顎骨を突き刺し、根尖病巣を持つものは感染がみられ、歯槽骨膿瘍と進展し、骨髄炎や歯の脱落などが起こる。
また、上顎の臼歯歯根は鼻涙管の圧迫、狭窄、眼窩への歯の突出で涙目、膿性眼脂、眼窩膿瘍、眼球壊死等の症状がみられる。
切歯の不正咬合は一見してわかる。
上顎は内側に向かって著しく湾曲し、下顎はゆるやかにカーブを描いて前方に伸びる。
臼歯の不正咬合は口腔内の耳鏡検査、レントゲン検査で鑑別を行う。
臼歯が不整に削れると下顎は舌側に、上顎は頬側に鋭い尖端を形成し、頬粘膜や舌に潰瘍病巣を形成する。
症状は食欲不振、柔らかいものだけ採取、りゅうえん流涎またはそれによる顎から胸部にかけての湿性皮膚炎、体重減少等である。
臼歯の不正咬合がみられるものは予後不良で、口腔内に潰瘍をつくり、ウサギは口を痛がる。従って定期的に過剰歯を研磨しなければならない。
二次的に進行した症状を持つウサギは、原因歯の抜歯を行ってから、膿瘍切開などそれぞれの治療を行う必要がある。予防は歯を磨耗させる餌の給餌である。

① 根尖膿瘍
歯が破折して、露髄する。例えば落下事故、ケージメッシュの噛み癖、ニッパ等での人為的破損で歯髄に感染がおこり、歯根部に膿瘍を形成する。
さらに歯槽骨の骨髄炎まで併発する。骨までを破壊し、皮膚までろうかん瘻管を形成し、眼の下や下顎に膿瘍がみられる。予後不良である。

②湿性皮膚炎
不正咬合によりりゅうえん流涎がみられ、顎から頚そして前胸部の被毛が濡れて皮膚炎がみられる。
またグルーミングが上手くできず、体表の被毛全体が流涎の状態ですかれることにより、分泌物で固まった被毛がみられる。

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