ウサギの疾病
(皮膚疾患)
              
              
            疾病
                    ウサギは高湿度に弱く、皮膚疾患が発生しやすい。
                    表皮は非常に薄いので損傷に弱い特徴がある。
                  
                    【細菌性皮膚炎】
                    	①飛節潰瘍sore hock
環境の不備(ワイヤーメッシュや固い床、過小ケージの運動不足など)、肉球のない足底、肥満、爪の過長などが関与した飛節の細菌感染である。
症状として潰瘍がみられ、過角化症、慢性炎症に発展し、動くのを嫌うようになる。
原因細菌はStaphylococcus、Pasteurella、Salmonella、Streptococcus、Pseudomonasなどである。
治療は発症の原因を改善し、抗生物質の投与を行う。また、環境の消毒を行う。
                  
                    ②湿性皮膚炎
                    高温多湿が関与し、肥満の雌に好発する。
                    不正咬合によるりゅうえん流涎で口の周りにも発症する。
                    尿や臭腺が原因となり、下腹部や肛門にも発症する(Hutch burn)。
                    また水や餌がこぼれ、肉垂が持続的にむれるために発症することもある(Wet dewlap)。
                    尿による皮膚炎は尿失禁、膀胱炎、尿中の多量カルシウム、不十分な世話、不潔なケージが原因となる。
                    治療は環境の改善と抗生物質である。
                  
                    ③皮下膿瘍
                    膿汁がチーズのように固まるため結節を呈する。
                    腫瘍と誤認されやすい。原因細菌はPasteurella multocida、E.coliなどである。
                    特に上下顎に発生した場合は予後不良である。
不正咬合などにより根尖膿瘍を起こしている場合、早期であれば抜歯を行い、完治させることも可能である。
                  
                    ④緑膿菌感染
                    原因菌はPseudomonas aeruginosaである。
                    症状は限局性の脱毛と湿疹であり、時に潰瘍を形成する。
                    脱毛周囲の被毛は緑色(Blue fur)を呈する。
治療は抗生物質の投与である。
                  
心因性脱毛
                    食餌の粗繊維不足、雌のホルモン起因、ストレス等により過剰のグルーミングが行われる。
                    口の届く範囲を自咬することで脱毛が生じる。
                    四肢や脇腹などに好発する。一般に発赤以外の皮膚病変を認めない。
                    治療は原因療法である。
                    雌の場合は卵巣子宮摘出術を選択することもある。
                  
皮膚糸状菌症(人畜共通伝染病)
                    原因菌としてTrichophyton mentagrophytesがよく分離されるが、Microsporum spp. もみられる。
                    発疹は四肢や顔によくみられる。
                    皮膚は乾燥し、らくせつ落屑、軽度のそうよう掻痒を呈する。
                    犬猫でみられる球状の発疹をつくらないこともこともある。
                    診断には真菌培養検査を行い、治療として抗真菌剤の投与を長期的に行う。
                  
寄生虫性皮膚炎
                    ①ウサギキュウセンヒゼンダニ
Psoroptes cuniculi
                    ウサギギュウセンヒゼンダニは、耳に寄生し、皮表の脱落表皮と組織腋を摂取し、体表で生活している。
                    組織内に穿孔しない。症状は耳の激しい掻痒であり、ウサギは頭を激しく振ったり、後肢で耳をひっかく。
                    患部は肥厚乾燥し、耳介内側表面に灰色、黄褐色のかひ痂皮が形成される。
                    外陰部、顔面、頚部、四肢にもみられることがある。
                    診断は、じこう耳垢の鏡検によりダニを検出して行われる。
治療はイベルメクチンの投与、耳掃除である。
                    予防はウサギ間の接触を避け、さらにダニ汚物の拡散を最小限にする。
                  
                    ②ウサギツメダニ
Cheyletiella parasitovorax
                    本症の発病はまれであり、症状を認めないことが多い。
                    背部から肩甲部の脱毛、落屑、掻痒などが軽度にみられる。
                    このダニは人畜共通伝染病で時々人を刺し、皮膚炎を起こすこともある。
                    診断は毛の検査や皮膚のそうは掻爬検査によるダニ検出である。
                    このダニは皮表に寄生し、組織内に穿孔しないため、患部の落屑をセロハンテープで採取し、鏡検してもよい。
                    治療は外用殺ダニ剤により行われる。
                    なおオーストラリアではツメダニ属の一種が粘液腫症を媒介するといわれている。
                  
                    ③ノミ
                    ウサギノミは野生のウサギによく寄生し、飼いウサギにはほとんどみられない。
                    飼いウサギの多くにみつかるノミは、犬ノミや猫ノミである。
                    野生のウサギにはヨーロッパウサギノミ(Spilopsyllus cuniculi)が寄生し、粘液腫症を媒介するといわれている。
                  
                    ④ハエウジ症
                    屋外で飼育されているうさぎによくみられ、夏から秋にかけて発生することが多い。
                    ヒフバエCuterebr /a属の数種類がウサギに寄生する。
                    幼虫は皮下組織にもぐりこみ、体内に移行する。
                    頚部腹側面、そけい鼠径部、後躯、えきか腋窩部が好発部位である。
                    症状として疼痛があり、動くのを嫌う。
                    患部には皮下腫瘤があり、中心性に壊死し幼虫が検出される。
                  
                    ⑤ウサギズツキダニ
Leporacarus gibbus
                    発生は多くみられる被毛ダニである。
                    症状は大量寄生により、違和感のため、ウサギ自身が毛をかんで、途中から刈り取られたようになる。
                  


