犬の代表的な病気⑨
新生子の生理と病気
新生子の生理
新生子とは、出生から3週齢までの仔犬のことです。この時期の死亡率は、約20%に達していますが、この率は、繁殖系、ハウジング、衛生状態、およびケンネルの管理法などで良くも悪くもなります。
生後24時間は、90%は眠っています。残りの10%は母乳を飲む時間です。母親のミルクを飲むことで、新生子は母体で暖められ、体温を保つことができるのです。また、母親にじゅうぶんな伝染病の抗体がある場合は、母乳を飲むことによって、免疫抗体を受け継ぎます。
- 3日目までは、脚を曲げる筋肉が優勢なために、新生子はいつも丸まっています。
- 4日目までは、皮膚を収縮させることができません。
- 6日目までは、まだ体を震えさせることができません。
- 7日目までは、体温調節ができません。
- 10日目ぐらいから、眼が開きだします。
- 16日目ぐらいから、歩きだすことができます。
- 体重は毎日調べ、生後8~10日で生まれた時の2倍になるのが正常です。
- 体温調節機能は、未発達なので、4週齢までは、成犬の体温より1~1.5℃低いこともめずらしくありません。
新生子の育て方
母犬が仔犬の面倒を見ない場合や、母犬がいない時には、飼い主が母犬の代わりに仔犬の面倒を見てやらなくてはならないことがあります。
仔犬が鳴いてばかりいるようなときは、病気か、お腹がすいているか、寒がっている場合です。
部屋の温度は、27~30℃にしてやりますが、床も必ず温かくなるようにしなければなりません。
ペットヒーターなどを利用して保温するのもよいでしょう。地域にもよりますが、夏でも保温の必要な場合もあります。
ミルクは、犬用のものが市販されていますので、今では犬の人工哺乳も大変楽にできるようになっています。
動物用の哺乳ビンを使って、溶かしたミルクが38℃ぐらいになるように温めて与えます。ミルクの量や回数は、仔犬の体重や週齢によって異なりますが、ミルクの説明書どおりに与えればよいでしょう。
詳しくは、獣医師に相談するとよいでしょう。
仔犬はお腹がいっぱいになると、すぐにおとなしく寝てしまうものですが、乳離れが始まるまでは自分で排泄することができないので、排便や排尿をさせてやる必要があります。
脱脂綿やティッシュペーパーを利用し、肛門、陰部などをやさしく刺激してやると排便排尿が起こります。
体重は、健康と発育のバロメーターです。毎日、体重を測定し、順調に体重が増えていくようであれば、発育は良好ということになります。
仔犬がミルクをよく飲み、よく眠り、よい便をしながら、順調に体重が増えていくようであれば、発育は良好ということになります。
初めての虫下しや、ワクチンの接種がすぐに必要になりますので、獣医師に相談してください。
新生子の病気
母親が健康で、環境がよければ3ヶ月齢までは、一般の飼い主の方に関係のある病気はあまりありません。起こりやすいのは、低血糖症、低体温症、水分の不足による脱水、それに母親の胎内にいる時に胎盤を通して感染する回虫、鉤虫の寄生虫病です。 これらの原因は、母親にある場合と新生子そのものにある場合があります。
母親の場合
栄養不良、ミルクの分泌不足、病気、仔犬の面倒をみないなどがあります。
新生子の場合
未熟子、先天性奇形、兄弟が多くてじゅうぶんにミルクを飲んだり、世話をしてもらえない場合があります。 よって、新生子の病気を注意する場合は母親の健康状態にもじゅうぶんに注意しなければなりません。
簡単な処置
【低血糖症】はちみつまたは砂糖をとかした温水を与えるか、人工哺乳をする。
【低体温症】体温を34.5℃以上にして母親にもどす。この場合、人間の胸で温めてやってもよい。
【脱水】水分を与えるか、人工哺乳をする。
【寄生虫病】
①交配をする前に、母親の便の検査を行い、必要に応じ駆虫をしておく。
②生後3週齢になったら、1回目の駆虫、特に回虫の駆虫を行ないます。
新生子の病気の見つけ方
毎日、1頭1頭の状態を調べます。
①体重を調べる。病気になると、体重の増加はストップします。
②便の状態を調べる。病気が進むと、便の色、形、においなどが、かわってきます。
③体温を調べる。母親は仔犬の体温が下がると、他の仔犬と区別して、面倒をみなくなります。また、口のまわりにミルクがつくことも体温の下がっている証拠です。
④全体の動きを調べ、他の新生子と比べてよく観察することです。
そのほか異常があれば、ただちに獣医師に相談することが大切です。
離乳
母乳を飲んでいたもの、人工哺乳の仔犬たち、いずれにしても、やがては離乳の時期を迎え、自分で普通の食事を食べていかなければなりません。
離乳時こそ、ドライのドッグフードの味に慣らすための最高のチャンスです。
これで新しい飼い主に飼われても安心です。
離乳の時期は、おおよそ30日齢からはじめます。離乳の第一歩は、子犬を食器になれさせることで、浅い皿などに、ごくわずかのミルクを入れて仔犬の目の前に差し出します。
次に、子犬用のドライフードをお湯でふやかしてミルクと混ぜ、おかゆ状の食餌の量を増やしていきます。
やがて、仔犬が口の周りや鼻先に離乳食をくっつけながらも、たくましく食べ始めるようになれば、もう一安心です。
生後50日を目安に、次の段階の、より固めの食餌を与え、ミルクや母乳を減らしていきます。
離乳が完了(55日齢)しても、はじめのうちは、仔犬の胃袋がまだ小さく、すぐにお腹がすいてしまいます。食餌は1日3~4回与えるようにしましょう。
狼爪と狼爪切除
犬は、普通、前肢の指が5本、後肢の指は4本となっています。それ以上余分に生えている爪や指は狼爪(狼指)といいますが、グレートピレネーズやその他のいくつかの大型犬など例外的に、狼爪があるものが正常のものもあります。
狼爪は両後肢にはえていたり、片肢だけのものもあります。狼爪(指)は、役に立つことのない、よけいなものなので、何かにひっかけたり、ケガをすることも多く、通常、生後1週間以内に切除手術をしています。
また、ショードッグ(ドッグショーに参加させる犬)の場合の、特にトイブリード(超小型犬)では、前肢の親指とともに、この狼爪を切除することが行なわれています。これは四肢を、よりすっきり、スマートにみせるためのものです。
この手術は、新生子の場合、非常に簡単に行なえる手術なので、仔犬が生まれたら、よく指を観察し、獣医師に相談してください。もちろん成犬になっても手術は可能ですが、生まれてから1週間以内に行なっておくべきです。
断尾手術
前述の狼爪手術と同様、新生子のうちに行なうものに、断尾手術があります。
ボクサー、ドーベルマンピンシェル、独ポインター、エアーデルテリア、フォックステリア、ヨークシャーテリア、スパニエル、プードル等の犬種では、生後1週間以内に断尾手術を行ないます。
成犬になってからでも手術は可能ですが、これもやはり新生子のうちに行なうべき手術で、たいへん容易にでき、手術後、ただちに家に連れ帰ることができます。