犬の代表的な病気⑧

お産と新生子の病気

犬のお産

雌犬は、生後6~10ヶ月くらいで最初の発情(出血)がきます。以後は、だいたい6ヶ月ごとに規則正しく繰り返します。
これに対し雄犬は、雌犬より2~3ヶ月遅れて性成熟します。雄犬は、その後いつでも交尾する能力があります。

発情

雌犬は、発情すると落ち着かなくなり、外陰部は、充血・腫脹してきます。発情の期間は通常3週間ほど続き、最初の10~14日間くらいは外陰部から出血があります。
最初の発情は交配させず、見送るほうがよいのですが、このような時に外陰部からの出血をどのように処理するかという質問をよく受けます。ペットのおむつをつけていただく以外にないでしょう。

交配期間

交配は、出血が始まって10~15日くらいの時が適しています。
この時期に排卵が起こります。交配の最適期を知るための医学的な検査を受け、確実な交配と受胎を心がけましょう。

妊娠

本当に妊娠したかどうかは、1週間に1回体重を測定してみることでだいたいわかります。
体重が徐々に増加するようならば、妊娠はほぼ確実ですが、確認のためには交配後28日ごろに獣医師の診察を受けることをおすすめします。

偽妊娠

交配の有無に関係なく発情のあと40日目ごろに、雌犬の体の状態が、たとえば乳頭(乳首)がピンク色になったりして妊娠犬とそっくりの特徴を見せることがあります。妊娠とは根本的に異なり、体重の増加が認められないことで見破られますが、時には乳腺が張りすぎて、しこりができ、乳腺炎になることもあります。このことも獣医師の診察によって確実になります。

交配前のプログラム

繁殖を希望する雌犬は、あらかじめ発情予定日までに各種ワクチンを受け、また寄生虫の検査・駆除も受けておきましょう。交配適期は、出血があってから、11日目から13日目です。

交配後のプログラム

交配後25~28日目に受診(第1回目)、妊娠の鑑定を行うので、午前中に食事を与えず、便・尿をさせたあと、病院へ連れて行きます(28日目をこえると触診での妊娠鑑定が難しくなります)。その後は、一般状態により、受診頻度は異なります。
交配後55~58日目に受診、分娩の難易度の検査、および分娩と新生仔と母親の管理等について、説明を受けて下さい。

妊娠中の注意事項

【運動】
妊娠前半は、通常の運動であればおおいに結構ですが、後半は消耗や危険のない程度の運動にとどめるべきです。
【食餌】
胎児が発育するにつれて母犬も食欲を増すものです。良質のドッグフードを1日3~4回に分けて与えるのがよいでしょう。これは、大きくなった子宮で胃腸を圧迫されて苦しくなるのを防ぐためです。食餌の量は平素より増やします。できれば、処方食(ヒルズのp/d)が最適です。
【駆虫】
初期には駆虫してもかまいませんが、4週を過ぎてからは、通常行ないません。いずれにしても、駆虫はワクチン接種と同様に、妊娠前に済ませておきたいものです。
【日光浴】
ビタミンDの不足を補うために、充分な日光浴をさせます。
【その他】
妊娠犬は、ふだんよりいらいらしているので、けんかなどで流産させないように注意しましょう。

お産

妊娠期間はほぼ63日ですから、出産予定日の2週間前になったら産室の準備にとりかかり、犬をここで寝かしつける習慣をつけます。なお、妊娠42~43日を過ぎるとレントゲン検査により胎児がうつります。
57日目になったら、病院で超音波検査・レントゲン検査・血液検査等をしてもらい、必要があれば、入院分娩の手はずなどを獣医師と前もって相談しておきます。
分娩が近づくと、食欲もなくなり、体温も下がります。分娩は、一般に夜半すぎから夜明けにかけてが多いようです。陣痛が始まったら、異常のあるなしにかかわらず、すぐに獣医師に連絡をとっておくことです。
最初の仔犬が生まれてから最後の仔犬が生まれるまでの時間は、一定していません。生まれてきた胎児は薄い袋をかぶって出てきますが、母犬はすぐにそれを食い破って食べてしまい、臍の緒をかみ切ります。 もし、仮死状態で生まれた胎児がいたら、すぐに鼻の穴をふさいでいる粘液をふき取り、口の中をぬぐってやったあと、体をふいて全身をマッサージしてやります。 難産は、ふつう、胎児の姿勢の異常、足のほうから出て、産道にひっかかっていたり、子宮の中で外へ出ることができないほど大きくなっていたり、母親の陣痛が弱すぎる時などに起こります。
このような場合には、ただちに獣医師に診てもらい、その指示に従うことが、母犬、仔犬のより多くの生命を救うことになります。

産後

分娩が終わっても、母犬は仔犬が気になって、排便や排尿にさえ、なかなか外に出ようとしませんが、時間をみはからって上手に誘い出し、産室の汚れた床を取り替えたり、不具な仔犬や、特別な手当てが必要な弱々しい仔犬がいないかどうか調べます。
また、母犬と仔犬の様子をよく観察し、母乳が飲めない仔犬がいたら、母犬の乳首につけて吸わせてやるとか、母犬が意識的に遠ざけるような仔犬がいたら、離して獣医師に相談してください。
授乳中の母犬は、平素の2倍以上の栄養を必要としますから、日頃食べ慣れている食餌のほかに、犬用のミルクや水も、産室の中や近くに運んで安心して食べられるようにしてやるのもよい方法です。
このように、お産の後の母犬と仔犬の世話には細心の注意が必要です。

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