猫とはどんな動物か②

1.寿命

日本の家庭で飼われている猫の平均寿命は現在10歳前後と推定されていますが、ワクチンの開発と獣医学の進歩、 キャットフードの普及によるバランスのよい栄養食などによって少しずつ寿命が延びている傾向にあり、長寿の猫としては20歳以上のものもいます。
なお、外飼いの猫の寿命は、室内飼いの猫に比べるとずっと短く3~4年といわれていますが、これは栄養状態や疾病、生活環境、交通事故等の要因が大きく影響しているものと考えられます。

猫の年齢と人間の年齢の比較(概略)

20日 100日 200日 1年 3年 5年 7年 9年 11年 13年 15年
人間 1年 5年 10年 18年 30年 40年 50年 60年 70年 80年 90年

2.生態と習性

社会生活

猫類の生態は単独生活が基本ですが家猫は家畜化されることで生態が変化することもあり、一軒の家の中で複数の猫が暮らす場合や、餌場、休息場所を共有する場合、 コミュニティーを形成するなどして生活する場合もあります。
社会生活をする上では動物相互間の情報交換や意志伝達が大切になりますが、 猫の意志伝達手段としては音声、顔の表情、ボディランゲージの他、マーキング行動でみられる 「尿マーキング」、「顔や脇腹などの擦り付け」、「前肢による引っかき行動」、「肛門嚢からの分泌物」、「雌の発情期の性フェロモン」など、 匂いによる伝達手段も極めて重要です。

行動範囲

猫は各々が一定の広さの行動圏(ホームレンジ)と狩猟圏(ハンティングエリア)を持っていますが、犬に比べはるかに行動半径が小さく、 家猫の空間的広がりとしての範囲は、主として自宅とその周辺の庭程度が行動圏になっています。
メスや去勢されたオスの行動圏は小規模で狭いが、去勢されていないオスは広く、メスの数倍と考えられており、近所のメス猫数頭を対象に巡回しているともいわれ、 メス猫の分布状況によってはかなり広い地域を行動圏にしていることになります。
猫は自分の縄張りには尿や分泌物をつけて印をつけますが、また、猫は空間的な住み分けとともに、時間的住み分けをして争いを避けることができます。
自由に行動できる猫の場合は夜になると共有地に出かけますが、ここで狩りをすることもあるので狩猟圏といわれ、都会では駐車場や空き地などがこれにあたり、 集合の場にはオスもメスも集まって猫たちは相互に交流を深め、仲間の関係を強化して地域社会の安定に役立っていると考えられています。
一方で屋内飼育の場合、行動圏は家族で暮らす部屋やベランダですが本来猫は安心できる空間があれば暮らしていけるので、 猫が立体的に自由に行動できるように家具等を配置してやることが大切です。また複数の猫が飼われている場合、 狭くても餌が豊富であればお互いに争いを避けるような行動を示して結構うまく生活していくことも可能です。

夜行性

猫は本質的には夜行性の動物です。
その証拠に闇夜でも視力が働き、人の目が感じる最低の光量の6分の1の明るさでも物を見ることができるほどです。
家の中で飼われている猫の行動を見ると昼間よく寝ていて、24時間の3分の2は眠っているとも言われていますが、夜になると活動的になる傾向があります。

鳴き声

鳴き声には仔猫が母猫に甘えたり、訴えたりするミューミューという鳴き声、母猫が子猫を呼び寄せたりする鳴き声、 発情期のオス・メスの誘い合うような鳴き声など猫同士のコミュニケーションの手段として使われている他、警戒、威嚇、闘争の鳴き声があります。
声帯は関係ありませんがゴロゴロという「喉ならし」も音による気分の伝達の一種で、怒りを表すうなり声や口を半開きにして喉から呼気を出す 「シュー」または「ファー」と聞こえる威嚇も重要な表現です。

マーキング行動

【擦り付け】

幼い猫は母猫に尾を立てて体を擦り付けます。
これは甘えと親愛の情を示す行動ですが、成猫が飼い主や仲のよい仲間に近づく時にも顔や脇腹をこすりつける行動がみられ、 安心や親愛の情を示していると考えられます。
この行動は顔から分泌される匂い物質を擦り付ける大切なコミュニケーションの一つです。

【爪研ぎ(引っかき行動)】

従来、爪研ぎは、爪が常に伸びてくるので適当な間隔で爪を研ぎ、利用しやすい武器にしておく必要から行う行動と考えられてきましたが、 その他にも爪で傷つける視覚的マーキングと足の裏から分泌される匂いのマーキングの両者が同時に行われているのです。
また機嫌のよい時に爪研ぎをしている猫も見られ、単なるマーキング行動だけでなく、大切なボディランゲージでもあるようです。

【尿マーキング(尿スプレー)】

猫の尿マーキングは行動圏を明らかにして自分の存在を誇示したり、不安を感じた時に示すマーキング行動です。
オス猫は成熟すると、尾を挙げて柱などの対象物に尿を噴射する「尿マーキング(尿スプレー)」を行い、 自分の縄張りを主張したり、メス猫でも発情期になるとトイレ以外の場所に尿をして「尿マーキング」をすることが少なくありません。
また最近の行動学的研究では、性行動に関するマーキングのほかに不安や欲求不満が高まると「尿マーキング」を行うことも指摘され、 オス猫では去勢手術をすると90%近くはやめると言われていますが、10%近くがマーキングをやめない理由として、不安やストレスが関係しているといわれています。

3.毛づくろい(セルフグルーミング)

猫は清潔好きで、いつも体を舐めたり前肢で顔を洗うような動作をしていますが、この毛づくろいは獲物であるネズミなどに匂いで感づかれないために必要な習性で、 そのために猫の舌の表面はザラザラしており、細かい汚れまで取り除くことができます。
猫同士が舐め合う行動がみられるのは、気のあった仲間であることを示します。
不安や心理的ストレスが続くと、毛づくろいの頻度が高まって毛が抜けてしまうこともあります。

4.猫の家出

猫は飼い主が理由の分からないまま家出してしまうことがよくあります。
猫は優先権がはっきりしており、また、自分の縄張りに固守する習性があるので、環境の変化にはデリケートに反応することはよく知られています。
例えば新しい猫がきた場合にそれが気に入らないで前からいる猫が家出してしまうことや、引っ越した場合、新しい家になじめずに出て行くような例はよく見られるところです。
特にオス猫の家出が多い傾向にあるのはメス猫より行動範囲(行動圏、生活圏)が広いので他の地域が気に入ったり、 かわいがって食べ物を与える人がいるとそこに定着してしまうということが考えられます。
またこれとは別に自立性の強い猫はそのグループの現状に満足できず、グループを離れる場合もあります。

猫とはどんな動物か①
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