犬の代表的な病気②

犬レプトスピラ症

レプトスピラ症は、スピロヘータという小さならせん状をした病原体によって起こる犬の伝染病です。
ネズミの尿や、この病気にかかっている犬の尿から感染します。
高熱が出て、元気・食欲がなくなり、黄疸や体のいろいろな部分に点状や斑状の出血を起こしたりします。
最終的には腎炎により尿毒症を起こし、死に至るという怖い病気です。運良く命をとりとめたとしても約1年もの長い間、尿の中にスピロヘータを排泄しますので、他の犬に対する感染源となります。
またレプトスピラ症は、狂犬病などと同様、人間にも感染する可能性があります。
身近にいる愛犬のためだけではなくお互いのためにも、こんな怖い病気にならないように、定期的に予防接種を受けることが大切です。
幸い、この病気についても良いワクチンがありますから、獣医師と相談の上、予防ワクチンのプログラムを立ててもらいましょう。

パルボウイルス性腸炎

パルボウイルスはウイルスの中で最も小さく、犬だけでなく多くの哺乳類にも広く病気を起こすことが知られています。 犬のパルボウイルスは1969年にその存在が確認されていますが、わが国でも一時期大流行を見ました。
この病気はたいへん感染力の強い病気で激しい嘔吐に始まり、トマトジュースのような下痢が何回も続くので激しい脱水が起こり衰弱していきます。
初期の治療を誤れば、死に至ることも多いたいへん怖い病気です。
幸い、予防ワクチンが日本でも完成しており接種ができるようになりました。ワクチンが全国的に使用されるようになってからは、ほとんど大きな発生は見られなくなりました。
しかし、いつどこで再び発生するか油断はできませんので定期的な予防接種が必要です。
不幸にして、感染・発病した場合には、嘔吐・下痢が頻回におきますので、できるだけ早く病院へ連れて行くように心がけてください。
この病気は最初の72時間が最も重要で、この間に強力に治療しなければなりません。
持続的な輸液療法と、適切な抗生物質を一定の間隔で投与することと、手厚い看護が必要です。
幼犬や老犬、または他に病気を持っている犬などが感染した場合は、特に致命的な結果となりやすいのです。
幼犬では心筋症を起こして急死したり、死亡率の高いことが特徴です。
パルボウイルスは抵抗性が極めて強く、アルコール、熱、クレゾール、その他の一般的な消毒薬はすべて効果がありません。 ただひとつ次亜塩素酸ナトリウム剤(塩素系漂白剤)が消毒効果のある薬剤です。
ハイターなどの漂白剤を水で約30倍に薄めて使用します。

ケンネルカフ(伝染性気管気管支炎)

ウイルスが原因で起こる伝染性呼吸器病です。
ちょうど人間のインフルエンザのようなもので犬が集団生活する場所に発生が多く、症状は、しつこい咳が突然出てきます。 軽症の場合は、自然治癒することもありますが、普通は治療を受けていても長引くことが多く、重症の場合には気管支肺炎に進むことさえあります。
予防は、病犬との隔離のほか、他の伝染病との混合ワクチンが使用されています。

寄生虫(回虫症、鉤虫症、鞭虫症、条虫症、コクシジウム症)

各種寄生虫の消化管内寄生により発症します。軽いものでは症状があらわれませんが、病気の運び屋となる場合が多いので注意が必要です。
一般に食欲が減る、あるいは良く食べるのにやせ細ってくる、下痢、血便、嘔吐などの症状を起こし、ついには元気がなくなる、さらに重症になると貧血や脱水状態に陥り、死亡することさえあります。
しかし、大切な点は、寄生虫がいると、いろいろな病気にもおかされやすくなり、しかも、病気が重くなりやすいことです。
予防は、寄生虫病にかかっている動物と一緒にしないこと、汚物をこまめに処理し、定期的(春夏秋冬)に検便を受けることです。
また、ノミは条虫の中間宿主ですので、ノミの駆除は条虫症予防のためにも必要なことです。

下痢

日本でも大流行したパルボウイルス性腸炎、古くから知られている恐ろしい急性サルモネラ症などでは一刻も早く強力な治療を開始しなければなりません。
すぐには生命の危険はないものでも、こじれてしまうとその原因はさまざまで、寄生虫や飼い方に問題があるもの以外では詳しい診断はたいへん難しく治療にも時間のかかるようになってしまいます。
たかが下痢ぐらいと思いがちですが、ひどいものや長引くものではたいへん多くの水分と電解質を失い体はいわゆる脱水状態になります。それに食欲不振や発熱などが伴えば、なおさら脱水状態は進行します。
そして、わずか体の約10%の水分が失われただけで、生命は危険にさらされるのです。これは小型犬、そして幼い犬であればあるほど、この脱水状態はより早く進行して行くのです。
ですから、幼い犬ほど早く診断し、治療する必要があるのです。また、老犬ではこのために隠れていた病気が表面化して大事に至ることが多いのです。
下痢の原因を究明する最適な方法は、なんといっても直腸にある新鮮な便を、直接顕微鏡で検査することですから、診察を受けるときは犬を連れて行ってください。
下痢には、小腸性のもの、大腸性のもの、その両方のものに大別することが出来ます。
小腸性のものには、寄生虫や原虫症、吸収不良や膵機能不全による消化不良、潰瘍や腫瘍などがあり、大腸性のものにはやはり寄生虫や原虫症、腸の潰瘍や腫瘍など。
そのほかの原因としては、犬ジステンパー、サルモネラ症、食物アレルギー、中毒、尿毒症などがあります。
飼主によっては、下痢をした動物に対して「食餌も水もやらないようにしている」などといいますが、これは消化器を休めるという意味だと思います。
しかし、前述のように脱水を進行させますので大変危険を伴います。特に、仔犬や超小型犬では充分注意が必要です。
むしろこのような危険をおかすよりも、より早く獣医師の診察を受ける方がよいと思います。

下痢をした場合、とりあえず家庭では、食餌や水を抜くことではなく、次のように、食餌の質に気を配ってください。
①繊維質や脂肪を減らし、穀類を与えないようにする。
②炭水化物を与えている場合はよく煮て与える。
③砂糖は与えない。

最近は全肉タイプの犬の食品が出まわっていますが、こうした食品は腸を円滑に働かせるための大切なもののひとつである穀類を含んでいません。
このため、腸の機能が低下し、食物が消化しきれないために、黒く悪臭の強い便(下痢)をします。このような下痢は大変多いように思われます。
これは抗生物質を与えてもよくなりません。全肉タイプのドッグフードだけで飼うことをやめ、良質のドッグフードを与えるだけでも急速に腸の活動が正常に回復するはずです。

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