ハムスターの飼い方

ハムスターは完全な夜行性で昼間は深い穴の中で寝ており、夜になると餌を求めて一晩10~20kmの距離を移動しているといわれている。また、雌のほうが雄よりも気が荒く、体も大きいものが多い。食性は、草食に近い雑食性である。気温が5℃以下になると冬眠したようになる。これを疑似冬眠という。疑似冬眠は非常に体力を消耗するため寿命を縮めたり、そのまま死んでしまうこともある。また、嗅覚と聴覚が敏感で、人に聞こえる聴域以外にも超音波を出してコミュニケーションを行っている。

ハムスターの飼育

ケージ

ゴールデンハムスターの場合は、授乳期を除いて1つのケージで1頭を飼育するのが原則である。夫婦でも、一緒にするのは交尾の時だけにする。ジャンガリアンハムスターをはじめとするドワーフハムスターでは、多頭飼いが可能であるが、相性により決定される。また1頭あたり51c㎡が最小床面積、高さも15cm以上が理想とされている。

巣箱

巣箱を設置するとハムスターは落ち着く。市販されている木製の巣箱でも、ティッシュペーパーの箱やトイレットペーパー芯を利用してもよい。最近は巣箱をかじった材質がそのまま床材になるという物も市販されている。

餌入れ

餌、床材を散らかして、餌の上に乗って食べる性質があるので、餌入れははめ込み式か壁掛け式が清潔である。もしくは陶製の重い物を使用し、ひっくり返さないようにする。

水入れ

糞便による汚染を防ぎ、被毛の乾燥を保つには、給水ボトルを使って与えるのが理想的である。床に置くタイプの水入れだと、容器の中に入ることがあるため勧められない。

床材/巣材

ケージの床に敷く物としては干し草、猫砂、木のチップ、土、ティッシュペーパーなどがあり、木のチップなどはハムスターには刺激が強いともいわれている。ハムスターはこれらを使って巣を作るが、なかでも杉の削りくずは床材として使用禁忌である。杉の削りくずは、白松や黄色松のようなよい香りのする軟らかい木材と同じように、動物に影響を与える揮発性炭化水素を放出する。

遊び道具

回し車
ハムスターの場合、狭いケージの中では運動不足になりやすく、その解消に有用であるが、チャイニーズハムスターはほとんどが回し車では遊ばない。
遊び場
ハムスターは夜行性の動物のため、暗いところを好む。そのためブロックや蛸壺のような容器が売られ、これらは巣として使われているようである。一番安上がりなのはトイレットペーパーの芯であり、芯の中は暗いので寝床にもなり、かじって遊ぶこともできる。
歯の摩耗
歯や爪などが伸びすぎないように小枝や板、もしくは硬い牛の骨、豚の耳、牛羊の蹄等を与える。

温度・湿度

理想温度 20~24℃、理想湿度 45~55%
 ハムスターは温度変化があまりない場所にケージを置かなければならない。気温が5℃以下になると冬眠したようになる。これを疑似冬眠という。疑似冬眠は非常に体力を消耗するので、寿命を縮めたり、そのまま死んでしまうこともある。また、一日の温度変化が10℃以上あると、ハムスターの健康に影響を与える。

トイレ

ハムスターはケージの隅の一ヶ所をトイレにする習性がある。餌箱から離れた隅をトイレとするか、もしくは市販のハムスター用トイレと砂を使用するとよい。トイレを使用しない場合、自己の排泄物でにおいをつけるとよい。通常はしつけを必要としない。

掃除

ケージ
ケージの掃除は容器(水槽もしくは金網)や床材によって異なるため、それぞれに合った掃除を行う。床材は汚れ具合により、毎日または数日おきに交換する。また、ケージ全体を水洗いして日光消毒するとよい。
トイレ
ケージ内に設置してあるトイレを毎日掃除する。トイレ砂を取り替えるだけではなく、数日ごとに水洗いをすると清潔でよい。
餌入れ
餌を与える時に掃除を行う。ペレットなど乾燥した餌を与える場合は簡単でもよいが、野菜など水分の多い餌を与える場合は、食後に水洗いして乾燥させる。
水入れ
水の汚れにくいボトルタイプの水入れが多用されているが、洗浄が困難である。吸口側についているゴムの部分のぬめりもふき取る。手間はかかるが、時々は熱湯消毒するとよい。

ハムスターの餌について

ハムスターは、やや草食に傾いた雑食性の動物である。飼育下では、ペレット・野菜・野草・干し草・種子類などを与え、疾病予防のためにもバランスのよいメニューを考慮する。餌の量はなくなったら足すという方法でもよいが、ハムスターは隠したり頬袋にため込むため、実際に食べた量を測定することは困難である。腐らない餌はなくなったら足していき、腐りやすい餌は朝晩にチェックして交換することが望ましい。

種子類

理想は低脂肪の種子、例えばトウモロコシ、小麦、麻の実などであり、そのほかに鳥用の皮付き混合餌のヒエ、アワ、キビ、カナリアシードなどもよい。高脂肪のヒマワリ、ピーナッツ、アーモンド、ピスタチオ、クルミは控えめにする。(ピーナッツの殻などは腐ると発癌性のアフラトキシンが発生する恐れがある)

野菜類

ニンジン、ブロッコリー、パセリ、チンゲンサイ、大根葉、小松菜、セロリなど

干し草

マメ科 アルファルファなど
イネ科 チモシーなど

野草

タンポポの葉、ノコギリソウ、ハコベ、クローバーなど

果物

リンゴ、メロン、ブドウ、イチゴ、バナナ、パイナップルなど

ペレット

16%以上の蛋白質を含有するハムスター用ペレットが理想である。

蛋白質

動物性蛋白質が推奨される。例えばゆで卵(白身)、低塩煮干し、低塩チーズ、小動物用ミルク、ヨーグルト、虫、肉など。

飲水

基本的には、水分が少ない環境でも尿の再吸収を行い、体内の水分を保持できる動物である。従って水分がなくても生きていけるのではなく、水分を補給する必要があまりないのである。逆に飲み過ぎて下痢をするようであれば、量を控えめにする。生野菜からも水分を吸収できるので、生野菜を多く与えた場合は、水の量を減らす。生野菜を多く与えると全く水を飲まないハムスターもいるが、主食がペレットの場合は必ず水を与える。水が不足すると採食量が減少したり、結石などの病気になることもある。また、授乳中の母親はさらに多くの水を必要とする。

ケアについて

ブラッシング

ハムスターの毛は主に春と秋の年2回、冬毛から夏毛へ、また夏毛から冬毛へと変化する。時期や期間は個体によって異なるが、ほぼ全身の毛に変化がみられる。通常、ハムスター自身がグルーミングにより毛を除去するが、時にはグルーミングが原因で、毛球症から腸閉塞になることがある。これらを防ぐためにも、ストレスを与えない程度にブラッシングをする必要がある。換毛期にはブラッシングをまめに行う。また長毛のハムスターでは、毎日ブラッシングを行うとよい。

シャンプー

犬猫と異なり、ハムスターには体臭がなく、猫と同様きれい好きである。自分で手入れを行う習性があるため、シャンプー(入浴)の必要は特にない。

爪切り

犬猫と同様、爪のなかに血管が通っているので、その先を切る。伸びすぎると、引っ掛かり折れることもある。自宅でも切れるが、暴れることがあり、必ずしも容易ではない。道具は小さなサイズの人間用の爪切りや、犬猫用の爪切り(刃に丸い穴がある)小さい工作用のはさみ、抜糸はさみなどを利用する。

疾患について

皮膚疾患

細菌性皮膚炎/皮下膿瘍
原因:ケージ内での損傷、咬傷での発生が多い。また不衛生な飼育環境が大きな要因となる。
症状:細菌性皮膚炎は脱毛・発赤等がみられる。皮下膿瘍は膨隆性の発疹を呈することが多く、ゴールデンハムスターの雌には陰部の横に膿瘍を特異的に形成し、ドワーフハムスターでは眼瞼や結膜に膿瘍を形成することが多い。
栄養性脱毛
原因:蛋白質・ビタミン・ミネラルが、それぞれ単独または複数で欠乏することにより生じると思われる。
症状:全身に脱毛がみられ、脂漏性皮膚炎を併発することもある。特にビタミンやミネラルの欠乏では、顔面、四肢、大腿尾側に限局的な脱毛がみられることが多い。

消化器疾患

寄生虫感染症
原因:縮小条虫・小形条虫・蟯虫・トリコモナス・ジアルジア等の寄生による。
症状:下痢、体重減少など。

口腔疾患

不正咬合
原因:先天的な発症もあるが、後天的な原因による発症が多い。金網ケージで飼育された場合、ケージをかじることにより常生歯である切歯の歯根膜や根尖部に炎症がみられ、歯根が変形して歯冠の成長に影響が出る。
症状:切歯の破折がみられ、歯根付近の歯肉から出血、炎症等を呈する。齧癖の物理的刺激により、緩い歯根膜がその動きを支えられずに変形し、歯の形成に障害が及び歯冠形態が不正となる。

肝疾患

肝炎
原因:細菌・ウイルスなどの関与が予想されるが、明らかにはされていない。誘因として粗悪な飼育環境、不適切な食餌、ストレス等の関与が推測される。
症状:食欲不振、下痢、体重減少、腹部膨満(腫瘤、腹水)等がみられる。症状は末期にならないと発症せず、発症時には致命的な経過をたどることが多い。

呼吸器疾患

ハムスターには、発咳がほとんどみられない、飼い主が呼吸困難に気付かない、等の理由により呼吸器疾患は意外と少ない。しかし、症状が発現した時には、手遅れの場合が多い。

循環器疾患

心疾患
原因:1歳半以上の高齢ハムスターに多く、遺伝、環境、食餌、併発病などにより発症の有無や進行が異なる。
症状:元気消失、食欲不振、呼吸困難、体重減少、削痩等である。ハムスターでは発咳がみられることはまれである。

泌尿器疾患

尿路結石
原因:高カルシウム食の多給、尿路の細菌感染、尿中へのカルシウム排泄といった生理学的要因が発生に関与している。結石はカルシウムを主成分とするものが多い。
症状:赤色やオレンジ色尿がみられ、頻尿、排尿障害、元気喪失、食欲不振等を呈し、重症例では排尿困難および排尿痛がみられ、尿毒症により致死的な経過をたどる。

生殖器疾患

卵巣子宮疾患
原因:性ホルモンの不均衡や感染等が関与していると推測される。
症状:陰部からの出血や、排膿、対称性脱毛などがみられ、元気消失や食欲低下などの変化はみられないことが多い。

感染性疾患

サルモネラ症
原因:腸内細菌科に属するサルモネラ属菌による。
症状:元気消失、食欲低下、被毛状態悪化、体重減少などである。

眼科疾

ハムスターは夜行性で視力が弱く、その代償として嗅覚と聴覚に優れている動物であるため、視覚にあまり依存していない。

神経・筋・骨格疾患

骨折
原因:飼育ケージの不備 (ワイヤーメッシュ、危険な玩具) により四肢が引っかかったり、ヒトに踏まれて発生する事故が多い。
症状:一般的な事故では脛腓骨に好発する。